恋のち、飴玉
「じゃあ、その次は何をするんだ」
お気に入りのファーコートが揺れる、揺れる。
せっかく作ってきたお弁当は、彼の膝の上で微睡む猫にぐちゃぐちゃにされてしまった。
「うーん、なんだろ」
思考を働かせてみるも、良い案は一向に浮かばない。
「ニャア」
白い雲がぐんぐんと地平線からのびてきて、地面に建物に、大きな影を落としていく。
隣に座る彼は相変わらずの猫愛好家で、膝の上ですっかり気持ちよさそうに寝入ってしまっている自身の飼い猫を優しく撫でている。
「………その次は死ぬ、かな」
すきま風が尚もコートを揺らして、私はそれが鬱陶しくて。
彼は私の答えに驚くこともなく「俺もそうするな。きっと」と呟いた。
視界の端で、飴玉の袋が柔い風に吹き飛ばされていった。