恋のち、飴玉
そんな二人のやりとりに、私はもう何の感情も抱くことはなかった。悲しいなんて、寂しいなんて、そんな感情はこの場では成立し得ない。
見慣れてしまった。聞き慣れてしまった。こんな腐敗した日々が、いつの間にか日常と化していた。
「………」
私は何も言わずに、リビングの扉を開けた。
玄関まで続く廊下は真っ暗で、小さい時は怖くて怖くて仕方なかった。
そんな廊下がむしろ落ち着く場所だと、そう感じ始めたのはいつだっただろう。