Essencial。
何も、言葉を交わさないまま
名前も年齢も知らない男と夜道を歩く。
何の理由があろうと、私を
必要としているのなら
今の私には十分すぎるほど着いていく理由になる。
………誰かに必要とされたい。
「あのさ。」
足を止めることなく前を歩く男が
初めて声を出した。
「なんであんな地下道に1人でいたんだ?」
…変な質問をするホストもいるものだ。
1人でいたら危ないといわんばかりのセリフに
その地下道で声をかけたのは
どこのどいつだ
と心の中で悪態をつく。
「…別に、ただの散歩?」
「なんで疑問系なんだよ」
素早くつっこまれた。
「ねえ、あんた何歳?名前は?」
もし年上だったとしても、
どうせ一夜の関係だからタメ口でいいや。
「今から俺に犯されるってーのに、
随分生意気じゃん。」
それを犯す本人が言うか?
「19………陽稀(ハルキ)、」
すごく簡潔に言ってくれた。
やはり少し、年上らしい。
むしろ最近まで高校生だったんじゃん。
「お前は」
「笑花(エミカ)。」
そのやり取りをしたあとは、また沈黙。
そもそも今から私を犯すやつが
短くだがコミュニケーションを
とるか?普通。
やっぱ変なホスト。
ほんとにホストなのかは知らないけど…