キミの背中。~届け、ラスト一球~
何だか、不思議だ。
夏休み、アポも取らずに、今、陵雅さんの隣を歩いてる。
陵雅さんの手元を見ると、野球部員の為に買ったアイスの入った袋が汗をかいている。
あたしの、ソフトクリームが1個だけ入った袋も汗だくだ。
賑やかなセミの鳴き声に、あたし達の持つビニール袋がカサカサと返事をする。
さっきまでは耳触りでしかなかったセミの鳴き声も、陵雅さんと一緒なら全く気にならない。
暑さだって平気だ。
陵雅さんはとてもすごい力を持ってるみたい。
「陵雅さん、また部活やりたいですか?」
学校へ向かう途中で、陵雅さんに聞いた。
「ん~、まぁやりたいけど、もう十分楽しんだから今はちょっと休憩したいかな。勉強も大変だしね」
「受験生ですもんね」
「一応ね」
陵雅さんがクスクス笑う。
「俺さ、これからもっともっと強くなっていくと思うんだよね、ウチの野球部」
あたしは「どうしてですか?」首を傾げる。
「湯野がキャプテンだからだよ」
草太がキャプテンだから?
「アイツ、野球のセンスあるし、部員をまとめる力もある」
「へ~」