キミの背中。~届け、ラスト一球~
あたしが頷くと、陵雅さんは微笑んだ。
「来年こそは、行けるんじゃないかな。甲子園」
そう言って、陵雅さんは眩しそうに目を細めて空を見上げた。
アスファルトが光りを反射してとてもキラキラ輝いている。
行けるかな、甲子園。
行けたらいいな。
草太の夢だもんね。
あたし達がグラウンドに入ると、ちょうど野球部が休憩に入るところだった。
陵雅さんの読みは当たっていたみたい。
「草太!!」
あたしが叫ぶと、草太と近くにいたミナが振り返った。
「うわ!希歩~!!」
ミナが大きく手を振ってこたえてくれる。
「おまえ、こんなとこで何やってんの?
暑いの苦手なおまえがよくここまで歩いて来れたな」
そう言って、草太が苦笑する。
「陵雅さんとデート」
あたしは草太の隣にピタリと近づいて耳打ちした。
すると草太は、フンと鼻で笑い、あたしを相手にせず陵雅さんの手に下がる袋を持って上
あげていた。
「湯野。それみんなで食え。差し入れ」
「ありがとうございます兄さん。これで残りの練習メニューもこなせます」