キミの背中。~届け、ラスト一球~
「早く乗れよ」
草太が顎で自転車の荷台を指す。
「何で?どっか行くの?」
「いいから、早く乗れって」
あたしが聞いても答えてくれない草太は、この暑さに少しイライラしてるみたいだ。
あたしが横向きに座った途端自転車を急発進させ、あたしは慌てて草太のウエストにしがみつく。
草太のヤツめ。
完全にあたしを女扱いしてないだろ。
自転車の後ろに乗ったのがあたしじゃなくて他の子だったら、もっと気遣って運転するはずだ。
「ッチ」
草太からは見えないから、あたしはまた口の端をクイっと上げて舌打ちをする。
だけど、草太が全力で自転車をこいでくれてるおかげで、流れる風がとても気持ちいい。
今までの汗を全部拭ってくれて、体感温度が少し下がったみたいだ。
「最高~!!もっとこげ~!!」
あたしが後ろでテンションを上げると、草太は「うるせ~」と言いながらもっとスピードを上げてくれる。