キミの背中。~届け、ラスト一球~


目的地もわからずただ草太のウエストにしがみつくあたし。


隣町までやってきた。


風と共にサラサラ流れるあたしの髪が、目や口に入り何度も耳に掛ける。


隣町で行きたいショップでもあるのかと思ったら、街からはどんどん遠ざかり、見えてきたのはオレンジ色に変わりつつある太陽に眩しく輝く海だった。


「草太!海!!海だよ!!海!!」


あたしがキラキラ光る海を指差すと、草太は「じっとしとけ!運転し辛いだろ!!」と吠えた。


草太は砂浜へ降りる階段の横に自転車を止めると、あたしを降ろして自分も自転車から降りる。


波の音と、はしゃぐ子供たちの笑い声で心が一気にワクワクしてくる。


「草太!どうして急に海に来たの?」


キャキャっと興奮して草太に聞くと、草太は眩しい夕日に目を細めて肩をすくめた。


「別に?」


「別にって……」


あたしはまたブスっと口の端を上げる。


「この間兄さん達と話しててさ、ガキの頃を思い出したんだよ」


「………」


「よく来てたじゃん、ここ、家族でさ」




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