キミの背中。~届け、ラスト一球~


無言の草太の背中を睨む。


「ちょっと何か答えなさいよ!!どこ行くの?」


ピタリ。


しばらく防波堤の上を歩いた草太が急に立ち止まった。


さっきの子供たちの賑やかな声が遠くから聞こえ、ここの砂浜にはあまり人がいない。


草太は、ズボンのポケットからスマホを取り出し時間を確認した。


「う~ん、もうちょっとかな?」


スマホをズボンのポケットにしまう草太が夕焼けに顔をしかめる。


もうちょっと?は?なにが?


「希歩」


「なに?もう!ちゃんと説明を……」


「目ぇ閉じて」


「……え?」


あたしの手首から離れた草太の手が、今度はあたしの目を覆う。


オレンジ色が遮られ真っ暗になる視界。


「ちょ……だから何?」


草太はあたしの目を覆ったまま、あたしを少し横に歩かせ位置を調節しているようだった。


草太の意味のわからない奇妙な行動に、言葉が荒くなる。


「草太!いいかげん手をはなし……」


「よし。今かな?」


草太の手がゆっくり離れる。


瞼の向こう側がオレンジ色に光り出し、あたしは目を光りに慣らす為ゆっくりゆっくり目を開けた。




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