キミの背中。~届け、ラスト一球~
あたしが唇を噛んで言うと、草太は少し照れくさそうに「おう」と言って口を尖らせて頷いた。
波の穏やかな音の中で胸いっぱいに汐の香りを吸い込むと、子供の頃よく家族と来ていた懐かしい思い出がよみがえると共に、草太が一生懸命描いてくれてる姿が浮かぶ。
「泣くなよ」
涙を拭ったつもりでも自然と出てくる涙に、草太が困ったように言う。
「すごく感動してさ、なんか今意思とは関係なく涙が出てくるの。草太のせいだ」
「俺のせいって……」
草太は言いながらプハっと笑った。
だから、あたしも一緒になって吹きだして笑ったんだ。
幸せで胸がいっぱい。
笑っているのに、涙が頬を伝う。
嬉しくて、嬉しくて。
あたしの中で、ただの幼なじみではなく、草太の存在が少し大きくなったような気がする。
隣にいるのがくすぐったくて、恥ずかしくもある。
17歳。
汐の香りに包まれ、世界にひとつしかないプレゼント貰った、最高の誕生日。