キミの背中。~届け、ラスト一球~


「おまえも、目指すんだろ?普門館」


「いきなり目標が高すぎるけどね」


普門館は、吹奏楽部の全国大会が行われる場所。


野球で言う甲子園と同じだ。


「でも、目標は高く持たないとね」


そう言って、あたしはグーッと伸びをする。


でも、あの文化祭以降、少しずつ吹部への入部希望者が増えてるんだ。


全国大会まで行けなくても、このまま部員数が増えていけば、きちんとした演奏が出来るようになるかもしれない。


「来年もトランペット持って応援しに行くからね」


「おう」


中学生の時にしたここでの約束、来年叶えようね草太。


青く晴れた甲子園のスタンドで、戦いに燃えるカッコイイ草太を応援するんだ。


「ああ、そうだ。おまえ、あれ今も持ってる?」


草太に言われ、あたしは「あれ?」と首を傾げる。


「おれがやっただろ?おまもり」


草太が口を尖らせる。


「ああ!うん。持ってるよ!」


あたしはスクールバックのポケットから、大事に取っておいた草太手作りのお守りを出す。


いつ見ても、不格好なお守りだ。



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