キミの背中。~届け、ラスト一球~


「それ、中見てみた?」


「え?中?」


なんで?中とか開けないよ。


開けたら、閉じれなくなるじゃん。


せっかく草太が糸で縫ってあるのに。


「見てないのか?まぁ、そうだよな。見てたら俺の気持ちとっくに気づいてたはずだもんな」


ブツブツと言う草太に、あたしは「何言ってるの?」と顔をグイっと前に出した。


「おまえ、ハサミとか持ってないの?」


「あ~、ソーイングセットの小さなハサミならあるけど」


「貸して」


草太が手を出してくるので、あたしはバックの中から小さなピンク色のハサミを取り出した。


そのハサミで、一生懸命縫った糸を切って行く。


ヒヤヒヤしながら見ていると、綿の中から一枚の小さく折られた紙が出てきた。


「はい」


その紙を草太が差し出してくる。


「なに?」


「いいから、開いてみろって」


あたしは眉間にシワを寄せながら、紙をゆっくり開く。


すると……。


「え……?」


『すきだよ』 



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