キミの背中。~届け、ラスト一球~


草太の不安定な字で、そう書かれていた。


「……これ」


驚いて目を丸めて草太を見る。


「俺の気持ち」


草太が膝に手をつき、前かがみになる。


「そのお守り渡した次の日、おまえがその紙を見つけて何か言ってくるんじゃないかってビクビクしてたけど、おまえ全く気づいてなかったんだな」


前かがみの体勢のまま、顔だけであたしを見上げる。


「う、うん。下手くそなお守りだなって思っただけで、まさか中に紙が入ってるなんて思わなかったんだもん」


「下手て……」


草太の顔が引きつる。


「ほんっと、おまえって鈍いヤツだよな」


「なっ……」


「俺の気持ちにずーっと気づかないとか。
マジで鈍過ぎ」


「だ、だって、そんな素振り一度も見せたことなかったじゃん!!気づかないよ」


あたしは言い訳をして、口を尖らせる。


すると、草太は盛大なため息をはいて体を起こした。


「俺はこれにもすぐに気づいたのにな」


「あ!!」


草太がエナメルバックの中から取り出したのは、あたしの手作りのお守りとその中に入れていた紙だ。




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