キミの背中。~届け、ラスト一球~


休日はこうやって昼過ぎまでゆっくり寝ることは出来るけど、今からの季節は汗だくで目が覚めるからそれが唯一嫌だ。


あたしは脱水症状を起こす前に自力で体を起こし、ベッド横の窓を開けてから、1階へ水分補給しに行く。


白のTシャツと中学の時の体育の短パン姿という色気のかけらもない姿でリビングに入ると、お母さんがひとりテーブルに座りテレビを見ていた。


「おはよ」


寝起きでまだガラガラの声で言うと、お母さんは呆れたようにテーブルに頬杖をついてあたしを見る。


「草太くんは朝も早くから部活に行ったというのに、我が娘はダラダラと昼過ぎに起きてくるなんてね~」


お母さんは首を振りながら言い、頬杖を崩して頬を上げた。


50手前のおばさんの頬についた頬杖の跡は、老化した肌にくっきりついて消えない。


あたしは「すみませんね~どうせあたしは暇人ですよ~」と下唇を出して言う。


冷蔵庫を開けるとすぐにヒンヤリする空気が足元に流れてきた。


このまま冷蔵庫の中に住んでしまいたい。





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