キミの背中。~届け、ラスト一球~


冷たく冷やされた麦茶を干からびた体内にゴクリゴクリと豪快に流し込むと、一瞬体が驚いたように、細胞が縮まった気がした。


潤った体でまた2階に戻る。


休日は何もすることなくて本当にヒマだ。


いつもスマホをいじるかパソコンで動画を見るか、音楽を聴くか。


ベッドに腰掛けて足を少し引くと、踵にゴツンとトランペットのケースがぶつかった。


辞めた辞めたと思いながら、すぐに手に取れる位置にしまうなんて、あたし相当のバカかもしれない。


こうやって、足を少し引くだけで触れてしまうんだから。


自然と頭に流れてくるのは、中学のコンクールの課題曲と自由曲。

何度も何度も鬼リピされる曲に吐き気がしてきて、あたしは急いでスマホに入れてある音楽を大音量で流した。


歌詞は切ないのに曲調の明るい曲が、ゆっくりゆっくりあたしの心を癒してくれる。


あたしはベッドに仰向けに倒れ、目を腕で覆って大きなため息をついた。



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