キミの背中。~届け、ラスト一球~
暗がりの中だから間違いかもしれないと思って、あたしは恐る恐る近づいてまた目を細めた。
あたしに気づいて顔を上げ、右手を爽やかに上げた……ユニフォーム姿の陵雅さん。
見間違いなんかじゃない……。
「陵雅、さん?え?なんで?」
「さぁ、なんででしょう」
陵雅さんは優しく微笑みながら言って、自分が座っている隣をポンポンと叩いた。
「まぁ座りなよ」
す、す、座りなよ!?
陵雅さんの隣に? あたしが?いいの?
混乱する頭は完全に冷静さをなくし、陵雅さんの言葉に頷くことも返事を返すことも出来なくなったあたしは、無言のままカクカクと体を動かし陵雅さんの隣に腰かけた。
少し距離を取って座ったつもりだけど、見上げた時にあまりにも陵雅さんの顔が近くにあって驚いた。
慌てて下を向くと、陵雅さんがプッと笑う。
「ごめん、俺部活の後だから汗臭いでしょ?」
「え?いえ!! あ、すみせん、今の行動……」
あたしがサっと下を向いた行動が、陵雅さんには汗臭くて顔をそむけた。ってとられてしまったと思いまた更に下を向く。