キミの背中。~届け、ラスト一球~
「ハハ。嘘だよ。冗談。
でもまぁ、ちょっと汗臭いよね。ごめんね」
どんな状況でも爽やかに笑う陵雅さんは、いつどの角度から見てもカッコイイ。
1歳しか変わらないのに、かなり大人に見える。
「あ、そうだ」
陵雅さんは、急に何かを思い出したかのように黒のエナメルバックを開けた。
そして中から炭酸の缶を取り出し、あたしに差し出した。
どんどん暗くなっていく中、近くの街灯にぼんやり照らされた陵雅さんの口角が上がる。
街灯、少し離れたところでよかった。
はっきり陵雅さんの顔を照らされたら、眩しくて直視できないから。
これくらいの暗さが、ちょうどいい。
あたしは陵雅さんから炭酸を受け取り、お礼を言う。
「暑い日は、やっぱり炭酸に限るよな」
陵雅さんの言葉に微笑んで頷く。
陵雅さんと同時にプルタブを開けると、缶がバックの中で少し振られていたらしく、プシュっと炭酸の泡が飛び出してきた。