キミの背中。~届け、ラスト一球~
顔に少しかかり、手の甲で拭う。
「あ、ごめん。
少し離れた自販機で買ってきたから。結構かかった?」
「あ、いえ。ただ顔に飛んだだけですから」
あたしが言うと、陵雅さんは小さく笑ってから、グイっと炭酸を豪快に飲む。
あたしも両手で缶を持ち、グイっと空を仰ぐ。
パチパチと炭酸が喉で弾け、ちょっとくすぐったくなる。
「びっくりしました。草太からライン来てたのに、ここで待ってたのが陵雅さんだったから」
缶の飲み口を唇に付けたまま、小さな声で言う。
ぶりっ子で気持ち悪い言い方だってわかってる。
でも、なんだか自然とそうなってしまうんだ。
陵雅さんのこと、大好きだから。
照れて、普通に話せない。
陵雅さんは、缶を持つ手を太ももの上に下ろすと、真っ直ぐ遠くを見ながら話し出した。
「俺が野球始めたのってさ、中学に入ってからなんだ」
いきなりの話題に、あたしは首を傾げる。