キミの背中。~届け、ラスト一球~
「それまで野球の経験なんかなくてさ。入学してすぐに見た部活紹介で先輩達がカッコよく見えて、俺もああなりたいって憧れで始めたんだよね」
「………」
「だから、最初の目的は野球がやりたいからじゃなくて、先輩達みたいにかっこよく見られたかったから」
陵雅さんはそれまで言うと、下を向いてハハっと笑った。
「不純な動機だよ。今考えると、野球を純粋に愛してるヤツに謝れって感じ」
あたしも陵雅さんの言葉に笑う。
手に握る缶が汗をかき、水滴が手にしみてくる。
「でもまぁ、あの時野球部に入ってなかったら、今の俺はいないと思うんだよね」
隣の陵雅さんがあたしを見下ろした。
「最初の動機なんてどうでもいい。そのあと、それをきちんと自分のものに出来るかどうかが大切」
生ぬるい風が吹き、あたしは乾いた目を瞬きさせながら陵雅さんを見上げる。