キミの背中。~届け、ラスト一球~
「俺は、今しかできないことだと思ってるから」
今しか、できないこと……。
「高校卒業するまで。俺には、次の大会が最後だから。負けた時点でおしまい。
だからこそ、後悔しないように必死こいてやってる」
「………」
「新堂もよく考えてみて。ウチの高校の吹部は、素人の俺から見たって正直レベルは低いと思う」
陵雅さんに言われて、思わず笑ってしまう。
「でも、やれるのは、今しかないよ?」
「………」
「ウチにはちゃんと吹部があるんだし。ほら、ない学校だってあるでしょ?ウチには、新堂がきちんとトランペット吹ける場があるんだからさ」
陵雅さんの柔らかな微笑みがあたしに落ちてくる。
そして、陵雅さんは最後の一口を飲みきるとそのまま夜空を見上げた。
あたしも同じように炭酸を飲みほして空を見上げる。
トランペットを吹ける場がある、か……。
刺さるなぁ……その言葉……。