キミの背中。~届け、ラスト一球~
草太は、廊下で友達に手を振ってエナメルバックを肩にかけ直しながら消えて行った。
あたしの中で、迷いがある証拠……。
迷い、か……。
あたしはしばらく考えあぐねた結果、音楽室に行くことにした。
授業以外で来ることはなかった音楽室に近づく度に、クラリネットやトロボーンの音が大きくなっていく。
野球部の試合の応援曲を、それぞれのパートに別れ練習をしている。
音楽室の窓から恐る恐る中を覗くと、意外な光景が目に入ってちょっと驚いた。
人数の少ない結果の出ないウチの吹部なんて、ただ毎日音楽室に行って適当に音を合わせてるだけだと思っていたのに、それはあたしの偏見でそうじゃなかったみたい。
確かに、人数は少ないし楽器もたいして上手くはないけど……少ないなら少ないなりに、みんな必死に練習してる……。
「新堂さん!!よかった!!来てくれたんだ」