キミの背中。~届け、ラスト一球~
まさか先生から受験を提案してくれるなんて思わなくて、その時点であたしはひとり勝手に舞いあがったんだ。
まだ受かったわけでもなく、ただ受験資格を得ただけ。
自分で受験したいと思っていても、レベルが高すぎて周りからバカにされそうで言えなかった。
でも、先生が提案してくれたと言えば、それも半減される。
須満高校は、学科試験の他にそれぞれ部活の試験もある。
だからあたしは、トランペット奏者として堂々と合格できるように今まで以上に練習に励んだんだ。
それなのに……。
試験前、ハードな練習と極度の寒さで唇がひび割れ、トランペットが吹けなかった。
どうしてその日に限って唇が荒れて吹けないのか。
あたしのただの管理不足だ。
通常なら吹けていたであろう曲も、音が裏返ったり高い音が出せなかったりでボロボロだった。
試験は不合格。
あたしの夢が、そこで途絶えたんだ。