キミの背中。~届け、ラスト一球~
あたしは長谷川さんに黙って準備室を後にした。
顧問が来た音楽室からは、不安定な音楽が聞こえる。
チューニングも合っていなければリズムだってバラバラなのに、先生は指揮を下ろして指示しようともしない。
ただ楽譜を見て音符を吹いたって、何の練習にもならないのに。
靴箱に向かい階段を降りると、徐々に吹奏楽部の音が小さくなっていく。
それでも、長谷川さんのトランペットの音だけは小さく響いていた。