キミの背中。~届け、ラスト一球~
「……あ」
ひとりで家に向かいトボトボ歩いていると、月極め駐車場のブロックに腰かける草太が見えた。
薄暗い中、近くの街灯に自転車とユニフォーム姿の草太が照らされている。
「おせーよ」
あたしに気づいた草太が、不機嫌に眉を寄せあたしを見る。
「草太、何してんの?」
「何してんのはこっちのセリフだし。
おまえ、早く帰ってったじゃん。吹部行ったんじゃなかったの?」
帰りは野球部が使用するグラウンドの横を通らないといけないから、草太はあたしが帰るところを見てたんだね。
「行ったよ」
「ふーん」
自分から聞いておいてそれ以上会話を広げようとしない草太。
草太は黒のエナメルバックをブロックの上からアスファルトに下ろすと、あたしに「座れば?」というように顎で自分の隣をさした。