失った大切
しばらくして学活みたいな授業が終われば下校になる
平野さんはペンを返してから帰って行く

私もなにかやることがあるわけでもないため教室から出たとき
後ろから声を掛けられる

『ねぇっ』

振り返るとマスクを掛けた女の子がいた
名前は高田未来ちゃん

『未来)一緒に下まで行かん?』

『一颯)私?別にかまわんけど』

特に帰る人もいないしと思い
私は承諾した
そして、共に昇降口まで行くと
なにやら外が騒がしい

『バスケ部どうですかー!?』

『野球部どうですかー!?』

どうやら部活の勧誘らしい

『ね、文芸部入らん??』

背の高めの男の人と
その人の肩口ぐらいまでの前髪がぱっつんな女の人が
わたしの傍へ来てビラを配る
男の人は薫江幸二〝クルエコウゾ〟先輩
女の人は匠あづな先輩

『一颯)いーっすわ、興味ないんで』

私はビラを受け取ることなく
未来ちゃんを連れさっさと歩いていく

『なに?あの態度』

『先輩にあの態度って』

口々に聞こえる声

五月蠅い

苛々する私の肩を叩いたのは

『一颯)よぉ、朋兄』

双子の兄貴だった
神無月朋夜
苗字が違うのは親が離婚したから
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