失った大切
『靖馬シズマ)…そうか、幸衣は死んだのか…』

地元に着けば
親父、神無月靖馬が私を迎えに来てくれた。
私は靖馬にすべてを話した
靖馬は私を抱き締め
私に頑張った、頑張ったと言って頭を撫でてくれた。

私は高校を出たら
幸衣を連れてこっちへ帰ろうと思ってた
そして、幸衣のお母さんを捜してやろう…と。

なのに、もうそんな必要はなくなってしまった。


『一颯)靖馬…』

『靖馬)帰ろう…』

靖馬は私をそっと抱き上げ家へ連れて帰ってくれた。


〝靖馬、幸衣、兄ちゃんたち……私…疲れたよ〟


目を瞑れば思い浮かぶ
幸衣の笑顔が
忘れられない

目が熱い


『靖馬)泣いとけ』

『一颯)っ…ぅうっ…』

私の瞳から止めどなくあふれる涙
拭っても拭っても止まらない

私は久し振りに声を上げて泣いた

苦しくて悲しくて
そして、寂しくて

『一颯)幸衣ぇっ』

思い浮かぶのは
笑顔の幸衣と
二度と目を覚まさなくなった

幼くして永眠した
幸衣の顔…



< 40 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop