くすんだ空を見上げれば



"触らないで"
と、振り払った私を


怒らせたのは私なのに
嫉妬で勝手に距離を置いてしまった私を


少しでも想ってくれて、悩んで弱々しくなっていた神谷は本当で、


凄く嫉妬深い私が恥ずかしくて


私が勝手に神谷を好きなのに
それで振り回して


紅葉に殴られて…




なのに










階段の下で待ってくれてる神谷は
優しく微笑んでいてくれて





嬉しくて 嬉しくて








もっと早く自分から行動してれば
こんな事に…

そう思うのも事実だけれど
今回どれだけ神谷を好きか改めて知って
神谷の優しさを改めて知って

気が付けば私は神谷に抱き付いていた。









「かえちゃんっ!?」

触るなと言った私がこんな事するなんておかしい事だと思うけど

でも本心じゃなかった。



もっと近付きたいし
もっと知りたいし
もっと側に居たい。






"もっと優しくしてよ"
"冷たくしないでよ"

そんな事言わなくても
いつでも私には優しいし
温かかった。



あの人とは違う。



紅葉が言ってた事、今なら分かる。







「ごめんね」

何度も謝る。謝って済む事じゃないのかもしれない。

でも他に言葉が見当たらなくて

「本当にごめんね」
止めどなく流れる涙を拭ってくれるかのように


受け止めてくれるかのように


優しく 力強く
抱き締め返してくれた。


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