くすんだ空を見上げれば
ハンドタオルで目を覆っていると
空いてる手を前にグイッと引っ張られて立ち上がった瞬間にギュッと抱き締められた。
「…えっ?」
ビックリして涙は止まった。
でもほんの一瞬で、神谷の温かさにまた涙が出てきた。
ギュッと抱き締められたままの私の涙がTシャツにシミを作る。
目を押さえたいけど私の両手は行き場をなくして。
「もう泣かないで」
消えそうな程静かな弱々しい声で。
でも涙は止まる事なく次から次へと出てくる。
悲しい涙じゃない。
でも嬉しい涙でもない。
この流れ出るものは
好きな想い。
募る想い。
行き場のない私の中で溢れる想い。
抱き締めてくれる神谷はその全てを受け入れてくれるかのように
優しく私に触れた。
煙草と酒の匂いに包まれた私のファーストキス。
一回離れた唇は直ぐに重なり私も神谷を抱き締めた。
顔が離れた頃には涙も止まっていて。