くすんだ空を見上げれば
「神谷…そろそろ帰らなきゃ…」時計は十一時を回っていた。


椅子から下りると同時にふらついて倒れそうになる私を、神谷はパッと支えてくれて
「ごめん、濃く作り過ぎたかも。送るから待っててね」と言い
会計を済ましてきてくれた。




「歩ける?」
神谷は手を繋いで歩いてくれた。



頭も体もフラフラだけど
気分はとても良かった。



これはきっと

楽しいって事。





「今日は楽しかった?」

私に合わせてゆっくり歩く神谷。


「うん、楽しかったよ」

「良かった。笑ってくれれば俺も嬉しいよ」
そう言って優しく笑う。





笑ってる?





ずっと紅葉以外の前で笑うなんて事なかったのにな…。






ねぇ…




神谷なら大丈夫?




私を裏切らない…?





信じても平気…?








友達で…良いの?








フラフラ歩く道程を手を繋いで。




その手は温かくて
忘れてた感情を少し思い出した。









大分歩いた気がした。



何を話したか全ては覚えてないけど
家の前に着いた時には軽く酔いも冷めていた。






繋いでる手が急に恥ずかしくなった。






「家…ここ?」

「うん」

酔いながらもちゃんと説明してたらしい。


「一回道間違えて遠回りしたけど」って笑いながら言う神谷に
凄い優しさを感じた。



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