くすんだ空を見上げれば

「楓、補習行こうよ!」

気付けばもう補習の時間になっていた。


「今日もうち来る?
もう直ぐ補習も終わりだね♪って言ってもテストまで勉強しっぱなしになっちゃうけど」

「うん」


それどころじゃない。



あの神谷の顔が忘れられない。



優しい笑顔が思い出せない。



いつも通り補習を終えて沙恵の家へ向かった。



家に上がって携帯を取り出すとメールがきていた。


《今日は遅くなる?》
神谷からのメール。



ドキッとしたが直ぐにモヤモヤしたモノが私を襲う。



《うん。友達の家来てるから…》

《迎え行くから、帰る時連絡して》

何でか分からない。



でもそれを断る事も出来なくて。



沙恵とまた神谷の話をして
それが余計に胸を苦しめる。




なんだろうこの気持ち…。





「楓、きっと嫉妬してるんだよ!」

沙恵はジュースを一口飲んだ。



「楓は今まで恋愛した事ないから、きっと元カノの存在が気になってる。自分の知らない恋愛がそこにはあって、それを対処出来ない。

自分の好きな人が誰かを好きでいた事が受け入れられない…。


違うかな?」


そう言われればそんな気もする。



見えない人に嫉妬…。




「あと、不安もあるんじゃない?先輩に彼女が出来たら…って」


「うん…」


「でもさ、私は楓に気があるようにも見えるけどね。難しいよね」

「うん。初めてだから凄く難しいよ…」



もう自分が分からない。



何がしたいのかも分からない。




本当に難しいよ…。




時刻はもう十時を回っていて、そろそろ帰らないとまた寝坊しちゃうから神谷にメールをした。



こんな心境であまり会いたくはないけど
仕方ない。



勝手に帰る訳にもいかないし。



五分くらいして神谷と約束した場所へ向かった。


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