くすんだ空を見上げれば



「何でお前いんの?」


さっきよりも低い声。


怒りが含まれている事が分かる。




「今通ったら紅葉君と会って~♪
神谷も来るって言ったから待ってたの!」


よく状況を把握出来なくて神谷を見ると
女の人は腕を絡めてベッタリくっついていた。



「触んな」

その腕を振り払う神谷。


それでも女の人は腕を絡めていく。





女の直感ってやつだろうか。
さっきまで気になっていた神谷の元カノだと思った。




絶対にそうだと思う。








「楓、こっちおいで」

いつの間にか立ち尽くしていた私は紅葉の声で我に帰り
紅葉の横に座った。






神谷の顔なんてまともに見れない。





怒っているのが分かるから。




とてもじゃないけど近寄れる雰囲気ではない。



あの女の人は凄いと思う。







でもあの人の事できっと神谷は私に対しても怒ったから
あの人の事嫌いなのかな…?



何かきっと過去にあったんだと思う。





「相変わらず冷たいね!久々に会ったんだから優しくしてよね」





優しく…




神谷は私に向けるあの優しい笑顔をその人にもしてたの…?










触らないでほしい。






嫌だ。こんな所見たくないよ。


< 70 / 123 >

この作品をシェア

pagetop