くすんだ空を見上げれば
「楓、ごめんな?呼んだりして」
紅葉が気を使って話してるのが分かる。
でも返事をする程今の私は穏やかじゃない。
沙恵の言ってた嫉妬って
こう言うモノなんだね。
「話あって呼んだんだけど…
大丈夫か?」
「話…?」
辛うじて冷静を装い聞き返す。
「も~う!
そんな冷たくしないでよ~
私会えなくて寂しかったんだからね~」
「ぁあ?もう関係ねーだろ」
嫌でも耳に入ってくる会話。
ベタベタ触る女の手。
見たくなくても見てしまう。
「話って今じゃなきゃダメなの?」
私の声は震えていた。
「…いや、帰るか?」
「うん。明日寝坊しても嫌だし、もう帰るよ」
スッと立ち上がり沸き出てくる感情を殺して
振り返らないように歩き出した。
「あっ、送るから」
さっきとは違う、いつもの神谷が私の腕を掴んだ。
何?
さっきまで怒ってたじゃん。
さっきまであの人に触られてたじゃん。
あんなに触られてた手で私を触らないで。
「離して」
バッと腕を払って後ろを振り返ると
女の顔が目に入った。
間違いなく私に向けてニヤッと笑った。
「っっ!!」
怒りが込み上げてきて言葉を発そうとした時
目の前が何も見えなくなった。
顔を上げると紅葉が私を抱き寄せていて
「帰るぞ」
そのまま後ろを見えないように方向を変えて歩き出した。