くすんだ空を見上げれば
無言のまま家へ向かう。
途中で前がぼやけて見えなくなった。
抑えていた感情が一気に溢れて涙が止まらなかった。
自分でもそんなに神谷が好きだなんて
思いもしなかった。
家に入ると紅葉は直ぐ私の部屋へ連れて行ってくれた。
「ごめんな。あいつがまさか来ると思ってなくて」
あいつとは女の事だろう。
何とか落ち着きを取り戻して深呼吸をした。
「神谷の元カノ?」
「あぁ。でも楓が気にする事はないよ」
「別に気にしてないよ…」
「好きなんだろ?」
「すっ…
好きじゃないよ」
紅葉は何で分かったんだろう…。
「見てりゃ分かるよ。
だからちょっと悔しくて朝意地悪したんだ」
「悔しい?」
「ま、兄の元から去ってく妹に悪あがきだよ」
「別に去ってないよ」
「好きな人が出来ると変わるんだって思って。
ちょっと淋しくなったんだよな」
「何それ。私は紅葉が一番好きだよ…」
変わる…か。
大体私こんな事話せる程心境は整ってないよ…。
朝の事は何でか分かったけど。
「俺を好きってのと神谷を好きってのは違うだろ?
でも気にしなくて良いからな」
気にしなくて済むのならそうしたい。
もう好きだとバレたなら紅葉に話しちゃおう。
元カノの話題での神谷の事を…。
「あ、話はいくらでも聞いてやるから、先に風呂入って来いよ」
そう言われお風呂に入った。