くすんだ空を見上げれば
いつの間にか補習が終わっていた。
ずっと上の空で勉強なんて身に付いてない。
「楓、大丈夫?今日赤点だったよ…?」
「えっ?
うん…」
赤点なんて取った事ないのに。
沙恵は心配そうに私の顔を覗きこんだ。
「帰ろ!」
何も悟られたくなくて慌てて目を反らす。
家に帰るまでにどんな話をしたか分からない。
「ただいま…」
静かな声で家に入る。
パリーン
ガシャーン
リビングから何かが割れる音がした。
「いい加減にしろよ!」
紅葉が怒鳴っている。
急な事でついて行けず頭が真っ白になった。
「あんたたちさえいなければ」
母親の声がキーンと響いたが
遮るようにドンッと
鈍い音がした。
「く…れは…」
怖い。怖い怖い。
母親が何を言っても構わない。
ただ
あの優しい紅葉が怒鳴るなんて見た事も聞いた事もない。
何が起きてるの?