くすんだ空を見上げれば


両親の喧嘩はたくさん見てきたけど
紅葉が…。






動く事が出来ずに立ち竦んでいると
カチャッと扉の開く音がした。






「…くれ…は…?」


リビングから紅葉が出てきた。


後ろから両親の怒鳴り合う声が聞こえてくる。





紅葉は今まで見た事もないくらい怖くて簡単には声をかけられない。








「楓」

怒った顔のままだけど
私を呼ぶ声は優しかった。



手を引っ張られ慌てて靴を脱いで



引っ張られるまま私の部屋まできた。






「必要な物だけ荷物まとめろ」

そう言ってクローゼットを開ける。




「紅葉?どうしたの?」



やっとの思いで聞くが紅葉は何も答えてくれなくて。



暫くの間お互いが黙っていると紅葉の携帯が鳴った。






「あぁ、今荷物まとめる。悪いけど上まで上がってきてくれねぇ?」


そう言って携帯を切った。




何が起きてるかまだ理解出来ない私に
紅葉は困ったように怒りを抑えながら優しい声で話し出した。





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