くすんだ空を見上げれば
涙でグチャグチャで声が出ない私の変わりに神谷が「行けるよ」と言うと、私にタオルを渡して荷物を運び出した。
私は紅葉にお姫様抱っこをされて知らない車へ乗せられた。
足だけじゃなくて、身体中が言う事を聞いてくれなくて。
紅葉はどこも怪我してなくて
私に優しい笑顔を向けると家の中へ戻って行った。
「大丈夫だよ」って紅葉が言ってくれて
やっと涙は止まった。
母親は私達のせいであんなに自分を追い詰めていたんだ…。
まさか、いつもの口喧嘩からこんな事になるなんて思いもしなかった。
今日紅葉はこの事が分かってたかのように人を呼んで車まで用意してた…。
震える膝を抱き抱えて家を眺める。
少しずつ冷静になって行くがそれと同時に神谷に対する気まずい思いを取り戻していった。
さっきは優しかったけど
やっぱりあの日の事は頭から離れていかない。
車は二台あって神谷は別のに乗ったから良かった…と思い
もう自分がいつもの私に戻っている事に気付いた。