くすんだ空を見上げれば

こんな事になるなら好きにならなければ良かった。


こんな淋しくなるなら最初から仲良くしなきゃ良かった。





もう遅い。

全て手遅れ。



人の温かさを知ってしまった今、簡単に作り物の 私 には戻れない。







神谷の優しい笑顔とか
手の温かさを知ってるから…。







全てを包み込んでくれるような煙草混じりの香水の匂い。








大好きすぎて
でもそれは空回りしすぎて。









大好きだから何も後悔したくない。









不安で潰されてしまいそう。

嫉妬で気がおかしくなりそう。






好きと伝えられたらどんなに良いだろう…。






戻るには神谷を知りすぎて好きになりすぎてしまった。







ご飯を食べながら溢れる涙を止める事は出来なくて。



心配そうに誰かに電話をする沙恵を気にもとめなかった。




どんな時も私は神谷でいっぱいなんだ…。






あまり食欲もなくて
半分も残してしまい
夜に食べると言ってラップをかけてもらった。




何もやる気出ないし
すっからかんになった私はお風呂を借りて

湯槽に浸かりながらポロポロ性懲りもなく出る涙を
止める術も分からずひたすら泣いて

神谷の優しい笑顔を思い出していた。

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