帰っておいで


たいして、広くも綺麗でもないマンションの一人住まい。
ポストを覗けば、山のようなチラシと一緒に手紙が一通入っていた。

裏の差出人を見なくても、それが自分を生んでくれた母親の字だとすぐに分る。

私は、それをバッグに入れ、疲れた足を自分の部屋がある三階へと引きずるように向ける。

古びたエレベーターの小さな箱は、ウーンと唸り声をあげ上っていく。
その小さな箱の壁に寄りかかり、自然とこぼれる溜息が一つ。

「疲れたな……」

誰にも聞かれることのない、弱音。



< 2 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop