帰っておいで


エレベーターのドアが開くと、数メートル先に人影があった。
私の部屋の一軒手前のお隣さんが、丁度鍵を開け家の中に入るところだった。

私は、エレベーターの前に立ったまま小さく会釈する。
お隣さんもなんとなく頭を下げて、そそくさとドアを閉めて部屋の中に入って行く。

このマンションに越して既に三年が経つけど、今の人と会ったのは数えるくらいだった。
未だに、言葉さえ交わした事がない。
むこうだって、そんなことは望んでいないだろう。

プライベート重視。

田舎と違って、この街には近所付合いなんて言葉は存在しない。

面倒臭い。

きっと少なからず、みんなそう思っているはず。



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