帰っておいで
私は、既に住人が中へと入ってしまったドアの前を通り過ぎ、家の鍵を取り出す。
鍵を開けて入ると、中は当然真っ暗で物音だってしない。
灯りをつけるスイッチの音が、やけに大きく聞こえる。
ヒールを脱ぎ捨て、真っ直ぐ冷蔵庫の前にいった。
必要以上に大きい冷蔵庫の中にあるのは、パックにくるまれた加工品とビール。
空しい中身に、また溜息がひとつ。
冷えた缶ビールを手にし、リビングへ行く。
バッグを床に投げ出し、去年冬のボーナスで買ったオットマン付きのソファーにドサリと座る。
いや、座るというよりは、倒れこむという感じ。