黒白世界
この笑顔がツクリモノだなんて、アンタら阿呆は気づいてるか?
『 愚 か 』
そんな言葉がピッタリだ。
愚かすぎて、逆に笑えてしまう。微笑みなんて軽いもんじゃなく、ニヒルチックに口角を上げてしまうんだ。
「あ、そろそろ時間だ。また明日来るね、捺芽ちゃん。湊くんも、行こ?」
「お、おお……じゃあな。蓮菊。明日来るときは手土産でも持ってくるわ」
「ははっ、楽しみにしてるね。
(はあ?また来んのかよ。しかも明日って。お前ら暇人か)」
手を振って二人が戸の向こうへ消えるのを待つ。ちらちらと湊がコッチを見てくるのがなんとも、ウザい。
「……。」カタンと音をたてて閉まった戸を暫く見つめ、二人の足音が聞こえなくなったことを確認する。
上げていた口角を、下げて。
振っていた手を、下ろして。
被っていた毛布を、投げて。
"女"である
【蓮菊 捺芽】(はすぎく なつめ)を
完全に消した。
ここから先は"男"の【ナツメ】だ。
やっと、自分らしくいられる。