黒白世界
「ああぁー、ダルい。女ってのはホント面倒臭せぇな」
溜め息をつき、胡座(あぐら)をかきながら首をポキポキ鳴らす。
「肩こってんなー……」呟いては窓の外を見る。青い、空が見える。
自分は心中灰色だってゆうのに、空はこんなにも澄みきっている。ああ、もう。ホント苛つく。
ベッドの上で胡座(あぐら)をかき、そのままの状態で窓の外を見る。
それが、いつしか日課になっていた。
いつからなんて、覚えていない。だけど、こうする事で本当の"男"である【蓮菊 捺芽】に戻れることだけは、確かだ。
「……明日も、晴れんのかな」
ポツリと呟いた言葉は、無情にも病室にシンと響きわたり、自分が独りだということを嫌でも分からせてくる。
いや、別に独りが嫌ってワケじゃない。
ただ、本当の自分を見てくれる人が、今この場にいない事にどうしようもない感情を抱いているだけ。
ふと、空に飛行機雲があることに気づいた。白く、真っ直ぐに延びる線。
その飛行機雲が自分の目に焼きつこうと青い空に映える白。
その白に向かって思わず手を伸ばしてしまえど、右手は何も掴めぬまま虚しく空を切る。
「……明日も、自分は生きてんのかな」
いつ死ぬか分からない"自分"。
"女"に"男"を喰らわれてしまいそうな恐怖は、きっと誰にも理解されない。