黒白世界


「ああぁー、ダルい。女ってのはホント面倒臭せぇな」



溜め息をつき、胡座(あぐら)をかきながら首をポキポキ鳴らす。


「肩こってんなー……」呟いては窓の外を見る。青い、空が見える。


自分は心中灰色だってゆうのに、空はこんなにも澄みきっている。ああ、もう。ホント苛つく。


ベッドの上で胡座(あぐら)をかき、そのままの状態で窓の外を見る。

それが、いつしか日課になっていた。

いつからなんて、覚えていない。だけど、こうする事で本当の"男"である【蓮菊 捺芽】に戻れることだけは、確かだ。



「……明日も、晴れんのかな」



ポツリと呟いた言葉は、無情にも病室にシンと響きわたり、自分が独りだということを嫌でも分からせてくる。


いや、別に独りが嫌ってワケじゃない。


ただ、本当の自分を見てくれる人が、今この場にいない事にどうしようもない感情を抱いているだけ。


ふと、空に飛行機雲があることに気づいた。白く、真っ直ぐに延びる線。

その飛行機雲が自分の目に焼きつこうと青い空に映える白。


その白に向かって思わず手を伸ばしてしまえど、右手は何も掴めぬまま虚しく空を切る。



「……明日も、自分は生きてんのかな」



いつ死ぬか分からない"自分"。


"女"に"男"を喰らわれてしまいそうな恐怖は、きっと誰にも理解されない。

< 15 / 18 >

この作品をシェア

pagetop