ローズクォーツ

ほとんど誰も使わない東校舎横の細い通路。

ちらちらと見える、輝く緑。

ここでキミと出会ったよ。

初めてキミに出会って、キミと一緒の時を過ごして

他愛のないことを話したり…。

だけど、もうどれだけ願っても、泣いても、叫んでも。

今までの日々は戻らない。

愛しくて、懐かしい、あの頃のあたしたち。

優しいキミの声や手や、ちょっとした癖や細やかな表情が

脳裏から離れない…

　　　キミが好きでした。
　　　だけど、ここでさようなら。

　　　いつだって一緒にいたかったです。
　　　でも、ここで別れる。

あたしの初めては、キミからもらった。

初恋、本気で恋をする心、嫉妬、甘い気持ち、切ない気持ち。

全部全部キミからもらったんだよ…。

だけど、キミはあたしを置いて行ってしまった。

あたしはずっとキミを見つめていた。

だけど、キミが見つめていたのは、あたしじゃない女の子……。

キミが教えてくれた最後の感情。

それは、

失うことのつらさ

キミがあたしの目の前からいなくなる。

手の届かない場所に行く。

そうなった時。

今。

心の中にぽっかりと暗い闇ができて、あたし自身が吸い込まれそうになる。

自分か自分じゃなくなるように、あたしの一部がどこかに置いてけぼりにされたみたいに

心に穴が開くんだ。

簡単にふさがることのない穴が……。