2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜
怖かっただけなのかもしれないな…




大人になって行く事が、

自覚しなきゃならなくなる事が、

責任をとらなければならなくなることが…








少し前を歩いていた金高が、歩調の遅くなった俺を訝しんで振り返る。

同時に、横合いから車が出て来たのが見えた。



反射的に、金高の手を引く。





「えっ!?」




勢いあまって、金高は俺にぶつかる。
軽いな、とふと思った。


ブロロロロロ…


「…車」

「あ、ありがと…」



ソロソロと金高が離れるその向こうに、バスが走って来るのが見えた。




「やべ、バスだ」


これを見送ると次は30分後。


パシッ

「咲日、走るぞ」

「へっ!?ちょっ…」





手を引いて走りながら、ぼんやりと気付く。

そうだ、こいつの名前は"咲日(サクヒ)"だったな。



"日が咲いた"ような朝日の中で産声をあげたからだと、温厚なこいつの母親から聞いた事を思い出す。







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