2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜
俺は金高を睨むように一瞥すると早足に教室をでた。












俺は、クラスで孤立している。
それは俺が自ら望んだ事であり、必然だったことだ。
あんな低俗な奴らとつるむくらいなら、独りの方が数万倍マシだ。






「…………クソがッ」






吐き捨てるようにボソリと毒づくと、俺はそのまま美術室へと足を運んだ。







この校内で、俺の話を理解してくれる人間はごく僅か。


だいたいはオタクだったりただの女嫌いだったりするのが気掛かりだが…





ガラ…………ッ




「あれ?
影山君、授業は?」








同じ学年、同じ美術部の楠木 草。
黒くて長い髪はここに転入した頃くらいから伸ばしてるらしい。

物静かだが知性のある瞳が印象的な少女だ。



俺は今、初めて呼吸をしたような気分になる。


「ウザいからサボった。
楠木は?」

「自習だから、抜けて来ちゃった」



そういって彼女はいつものように淡く微笑う。
軽くなった足どりでそこから少し離れた自分のキャンバスとイーゼルのある場所に座る。



彼女はいつも淡く笑って俺の話を聞いてくれる。
そしてたまに、すごくしっくりくる事を言ってくれる。


物静かだけど、流されない。
非常に好感の持てる女子だ。


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