2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜
楠木は俺の憧れだ。
したたかで流されない。

世界の人間が皆彼女のようだったら良いのにと本気で思う。


少しして俺も自分の作品をなんとかするべくキャンバスに向かった。
俺の作品はまだ下地塗りの段階で一面を真っ赤に塗っただけだ。

そこにパレットナイフで黒をのせていく。


俺の作品は、まだはっきりとした構想は決まっていない。
けどやはり、俺はそこにも自分の中に絶えず溜まる鬱憤を吐き散らすつもりだ。




キーンコーンカーンコー…ン






放課後を告げる鐘がなる。
しばらくして、ここには多いにそぐわないバタバタとした足音が聞こえてきた。





「やーっぱりここにいたーっ」







来たのはやはり金高だった。


「はい、プリント」

「…それだけのためにわざわざ来たのかよ」


くだらない。


「だってキョースケそのまま帰っちゃう時だってあるじゃん」



漫然と言ってのける男女の手からプリントをもぎ取ると俺は立ち上がって美術室を出た。


金高のせいで描く気が失せた。
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