2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜

その週の金曜日








「莉子ーっ!
髪セットするの手伝ってぇー!」

「もー化粧に時間かけすぎ」


浴衣を来て鏡の前でアイラインを引いてる香奈子の髪に指をかける。




「とびきり可愛くして京介を魅了してやるの!」

「何それ…」



どうやら柏原君には日々馬鹿にされているらしい。

鏡越しに香奈子がうらみがましい目付きで私を見る。



「なんで莉子はそんなに支度早いのよー…」



鏡に映る自分の姿を見る。

紺地に淡くて白い芙蓉の花をあしらえた赤い帯の浴衣。
いつも二つに纏めている細くて茶色い髪は今日はカンザシで一つに括っている。



香奈子みたいに化粧をしているわけじゃないから、時間がかからないのは当たり前だと思う。





「私は化粧してないもん」





「香奈子ー!京介君達来てるわよー!!」

「わかってるー!!」



階下から聞こえた香奈子の母親の声に香奈子が苛々と声を張り上げる。

私は苦笑しながら香奈子の髪にコテをあてがう。










「いつまでやってんの?」

「きゃあ!京介!
何はいって来てんのー!?」



ドアが開いた途端甲高い声をあげた香奈子に柏原君はうんざりと顔をしかめる。



「待たせ過ぎなのが悪い」

「柏原君、浴衣で来たんだ」




背の高い柏原君は濃紺の浴衣を黒い帯で締めている。
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