2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜
彼の黒い髪によく似合っている。


私に声をかけられ彼は少し気まずそうな顔で苦笑する。



「来てこいってこいつがうるさくてさ。
さ、行こう」



そう言って部屋を出る柏原君について出ようとすると、香奈子が動かないことに気付く。



「香奈子?」




声をかけると我に返ったのかはっとした顔で私を見て、赤面しながらあわてふためいた。



「あっいや!
やっぱ、雰囲気変わるなぁーって…」


…なるほど


「柏原君に惚れ直してたわけだ」


「違っ…!!」





真っ赤な顔をしてる香奈子を置いて階段をおり、玄関にいる柏原君の肩を叩く。







「あの髪、桐銛がやってやったの?」

「うん?そうだよ」



「きっとだからだな…」





つぶやくように言った彼を見れば、耳まで真っ赤にしている。



なんだかんだで、うまくいってるようじゃないか。



思わずおかしくって私は笑いながら下駄をひっかけ外に出た。









外には、藁半紙のような白い仁平姿の蒼岸君がいた。


私の姿を見つけると、穏やかに笑いかけて「おす」とだけ言った。

何故彼は普段あんな風に明るく振る舞っているんだろう。


今の彼の方が、よっぽど私には魅力的に映る。







「浴衣じゃないんだ?」

「動きにくいじゃん」


まぁ、確かに。



「似合うな。
浴衣」





月明かりにワックスで固めた彼の髪が透けて、何故かとても…

幻想的に見えた。
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