2ndアルバム〜あの日の鼻歌〜
『ゔぬぅ〜』



受話器越しに奇怪な唸り声が鼓膜を震わせる。



「おう、起きたか」

『今朝の味噌汁は鰯ダシっすかぁ〜
煮込まれた魚が浮いてるっす〜』


ルームメートであり同期の幼なじみ久那坂 桔音(クナサカ キツネ)。
朝はたいていネジが緩んでこんな具合になる。

確かに身長は一般の女子高生よりは少し高めでスタイルも良い。

モデルをしようと思えば出来るだろうがどうにもズレるのはこいつが芸術家肌だからだろうか。




「魚もちゃんと食えよ。
栄養あるんだから」

『ぐれちゃんうちのおかんよりおかん臭いっす』


うるせ。


「お前今日朝から製作あるんだろ?
斎(イツキ)が来る前にしたくしとけよ」



よくわからない声が返って来る。
のびをしたんだろう。

そのあと『おかんもどきは早く白球追い掛けに行くっす』という声の終わりと同時に通話は切れる。







俺はいつもの通り携帯をバックにしまうと部室を出た。
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