密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 犯人はミクの常連客、木村さんだった。

 ミクが無断欠勤した日に一度だけ私を指名してくれた事がある。 

 話し慣れたミクがいないからか、小粒な汗で額を濡らしながら不安そうに俯いていた。


 隣に座ると油と汗の匂いがして、綺麗に切り揃えられている爪の周りは落としきれない油が染み込み黒ずんでいた。

 どんな職業か聞かなくても推測できた。スーツやネクタイだけが仕事として優良な訳じゃない。アイロンをかけた真っ白なワイシャツだけが清潔な訳じゃない。



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