密と蜜~命と共に滴り堕ちる大人の恋~
 硬直したまま春樹を見ると、

「なんて、嘘」

と、アイドルチックに大人をからかうように笑った。

 
「嘘でもいい」

 気づくと吐息のようにそう囁いて春樹の手を強く掴んでいた。

「これから、映画の撮影なんだ」


 現実的な答え。迷惑なファンだと思われているだろう。

「そっか。ごめん……。つぐみさんとの映画、楽しみにしてます」


 そう言って緩く離した私の手を今度は春樹が掴んだ。


「撮影が終わってアイドルの仮面を外したら、二人で……行こう」





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